●咽頭異物
日本では古くから魚を食べる文化があり、みんなさん大好きです。そのため咽頭異物の大半は魚の骨です。特に夏の時期増えるのが、ウナギの骨の咽頭異物です。土用の丑の日にはウナギの骨を口蓋扁桃などに刺す患者さんがおおくなります。ウナギの骨は細いですが、扁桃は柔らかい組織ですからけっこう刺さります。ご注意ください。摘出方法は魚骨を直接確認できれば鉗子で、また喉の奥に刺さってしまっている場合は鉗子孔付きファイバースコープを用いて摘出します。
●食道入口部の異物
食道入口部の異物は基本的に総合病院へ紹介となります。
食道入口部とは正式には下咽頭輪状後部で、普段は閉じていて逆流を防いでいます。大学病院勤務時代は、小児ではコイン、老人では義歯やPTP (錠剤やカプセルのpress through package) 異物をよく経験しました。これらは全て食道入口部(下咽頭輪状後部)につかえて動きません。患者さんは痛くて唾液が飲めず、つらそうに受診されます。鉗子孔付きファイバースコープを用いても摘出できない際は、手術室で局所麻酔下に硬性鏡という金属製の筒の先端を口から食道入口部まで進め、直視下に異物鉗子でつかんで摘出します。局所麻酔下ではかなりの辛さです。ただし、この手技は熟練を要するため、専門医のいる施設でないと危険です。
●胃内落下異物
口から肛門に至る消化管で一番狭い食道入口部(下咽頭輪状後部)を通過したものは、ほぼ全例便にくるまって排出されます。ただしボタン型電池を誤飲した場合は緊急に摘出しなければなりません。お子さんや老人のいるご家庭では、誤って飲み込まないよう注意しましょう。
※ボタン型電池の誤飲はほとんどが小児で、アルカリ電池が胃内に停留すると胃酸で表面金属が腐食され、アルカリ性物質が流れ出て胃壁を損傷します。リチウム電池は放電による電気分解で電池外側にアルカリ性液が生成されるため、胃酸のない食道内でも非常に短時間で潰瘍を形成することがあります。
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