ゾレア®皮下注~重症花粉症治療の新しい治療薬
2020年より、重症・最重症のスギ花粉症に対して、2月~5月に抗IgE抗体オマリズマブ(ゾレア®)を皮下注射する治療(保険適応)を行うことができるようになりました。 スギ花粉症によるくしゃみ・鼻水がとまらない・鼻がつまるといった鼻炎症状が飲み薬、点鼻薬などでもおさまらず、1日中花粉症で悩んでいる方、また、内服薬の眠気が強く、より強力な効果が期待できる薬剤に変更・増量できないために花粉症症状がおさまらない方にとっては、検討する価値の高い治療です。
ゾレア®皮下注とは
●概要 インフルエンザワクチンなどと同じ皮下に注射する注射薬です。
●対象・時期 対象年齢は12歳以上です。時期はスギ花粉が舞う2~5月に行います。 今シーズン、従来の治療法(抗ヒスタミン薬など)で1週間以上治療し、コントロール不良な方が対象となります。
●治療の前に採血が必要です。 血中総IgE値とスギ特異的IgE値を測定する必要があります。投与量および投与間隔は直近の総IgE値と体重で決まります。間隔は2週間又は4週間ごとに注射します。 (総IgE値が異常高値の場合や、スギ特異的IgE値がClass 2以下の場合は適応となりません。)
●費用 費用はゾレア®︎の薬剤費のみで、3割負担の方で1か月あたり約4444円〜69953円かかります(投与量・回数によって金額が変わります)。 その他、受診、検査にかかる費用、同時に服用し続ける必要のある抗ヒスタミン薬の処方費がかかります。 自己負担が高額になる方は限度額適用認定証を申請し、年収に応じた医療費の助成を受けることをお勧めします。 小児は12歳以上が適応です、自治体によってはこども医療費などの医療費助成が受けられます。
●効果持続期間 効果の持続期間は約1ヶ月と言われています。効果はそのシーズン限りとなります。そのため、ゾレア®の適応となった重症花粉症患者さんは、6月以降はスギ花粉舌下免疫療法を考えてみましょう。舌下免疫療法はスギ花粉症に対する唯一の根本治療です。詳細は気軽に窓口にお問い合わせください。
●ゾレア®皮下注のメリット スギ花粉飛散時期に内服薬、点鼻薬でなかなか効かなくて、毎年非常につらい方、2〜3月に受験を控えるお子さんにとっては大きな助けとなる可能性がある治療です。 これまでの治療法で効果がなかった患者さんにも改善が期待できます。 効果持続時間が長いため、薬の投与頻度が少なくてすみます。
●副作用について 稀ではありますがアナフィラキシーショックを引き起こす可能性があるため(国内の臨床試験ではアナフィラキシー発現者はいませんでしたが、海外の喘息を対象とした臨床試験では、成人で0.1%、小児で0.2%にアナフィラキシーが生じています(ノバルティス社ホームページより))、初回注射後は、1時間ほど注意が必要です。他に、同じく発生頻度は低いですが、めまい、疲労、失神、傾眠といった副作用も報告されており、運転をお仕事でなさる方は注意が必要です。
●治療の流れ 1回目の受診 問診をして、重症または最重症のスギ花粉症であるかどうか診断します。 1週間以上、 既存の治療(抗アレルギー剤、鼻噴霧用ステロイド剤など)を行います。 2回目の受診 1回目の受診時に行った既存の治療の効果を確認します。効果が悪ければ、ゾレア治療の適応となりますので、投与量決定のための血液検査(総IgE測定)を行います。 3回目の受診(ゾレアの投与日・投与量の決定) 約1週間後に採血結果を確認し、投与量と投与間隔を決めます。適応のある方はこの日に価格と投与の通院間隔(2週間毎または4週間毎)もお伝えします。 4回目の受診(ゾレアの投与日) ゾレア®の注射を開始 受診していただきゾレア治療の最終確認とゾレアの投与を行います。 投与数日後~2週間後に効果が出始め、効果の持続期間は約1ヶ月と言われています。
「IgEとは」 スギ花粉が鼻の粘膜に付着すると、体の免疫防御システムは「IgE」という免疫グロブリンを作ることでスギ花粉を排除しようとします。このIgEにスギ花粉がくっつくことでヒスタミンという生理活性物質が大量に放出されてしまいます。このヒスタミンが神経や分泌物を出す鼻腺、血管などにあるヒスタミン受容体にくっつき、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどをひきおこします。花粉症の患者さんは体にこのIgEがたくさん存在しています。そのため、花粉症のシーズンになるとたくさんのスギ花粉がこのIgEとくっつき、過剰にくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどをひきおこします。 「ゾレア®」はこのIgEをブロックすることで過剰なくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどを抑制する効果が期待できる治療薬です。
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